「エドー!アルー!今日は何の日か分かる?」 それはたまたまリゼンブールに帰っていた日のことだった。 機械鎧の整備のこともあり、ロックベル家でのんびりとまったりと一日を過ごしていた。 …この田舎だからすることもない、ということもあったが。 ウィンリィはエドワードの腕の整備をしながら、二人にそんなことを訊いてきた。 「んー…今日は二月十四日だろ?」 「そう二月十四日!と言ってもあんた達には縁のない日かもしれないけどね〜」 と、ウィンリィは一人で笑っている。 エドワードは今日が何の日か考えるが、何も浮かばない。 縁のない日…それが妙に引っかかる。 それに何故かその言い方にムカツキを覚える。 「あっ…今日はもしかして…」 何かに気付いたようにアルフォンスはウィンリィのほうに向きかえる。 すると目が合ったようで、プイッと目を逸らしてしまった。 顔には出せないものの、アルフォンスは苦笑した。それを感づいたのかウィンリィの顔がほのかに紅潮した。 「なんだよ二人して…俺だけ仲間はずれかよ」 左手をズボンのポケットに突っ込み、ふてくされる。 「むしろ僕のほうが仲間はずれだけどね」 アルフォンスはそんなエドワードを見ながら、「仲間はずれの僕はデンと遊んでくるよ」と言って、デンを連れて出て行ってしまった。 気まずい二人。 不穏な空気が何故か二人の間に流れる。 二人とも黙ったまま、エドワードはただ椅子に座って窓の外を見ていて、ウィンリィは機械鎧の整備をしている。 ふとウィンリィが作業をやめて部屋から出て行こうとする。 「…どこ行くんだ?」 「…トイレよ」 「あっそ」 顔も合わせずにそんな会話だけで。 ウィンリィは静かに部屋から出て行ってしまった。 「今日ってなにかあったか…?」 一人になって、やっとことの大事さに気付いたのか考え込む。 アルフォンスが自分とウィンリィの仲間はずれ。 いつも一緒だったのだ。仲間はずれという言葉では何も思い浮かばない。 そういえばここに来る前に大佐がこの日を楽しみにしていた記憶がある。 いや、大佐に限らない。中尉以外の軍の野郎たちが何故かそわそわしていた。 それにもう一つ、誰かにこんなことを言われたのも記憶にある。 「お前にはくれる相手がいていいな」、と。 くれる…ウィンリィが自分に何かをくれるのか?でも誕生日でもなんでもない。 「ちぇっ…結局俺が仲間はずれじゃんか…」 そう呟いたときにウィンリィが戻ってくる。 後ろ手で扉を閉めて、エドワードのほうに歩み寄る。 「あんたこういうことに関してはあたしなんかより頭悪いよね」 と言って、ピンクの包装紙に赤いリボンで包まれた長方形の箱を差し出した。 顔を真っ赤にし、目を合わせようとはしない。 逆にエドワードのほうは何かに感づいたのか、呆気に取られたように口をぽかんと開けていた。 「そっか…今日は…」 「気付くの遅すぎ。一応さ、頑張って作ったんだから受け取ってよね」 箱をエドワードの胸に押し付け、自分は作業台のほうへと向かってしまう。 その顔は本当に見せられないぐらいの恥ずかしさでいっぱいだった。 幼馴染といってもこういうことをするのは初めてだったからだ。 「…サンキュ」 自分より少し大きいその後姿を見ながら、エドワードは言った。 その彼のウィンリィと同じく顔が真っ赤だったとか。 The End
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